学生相談研究
Online ISSN : 2758-0067
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研究論文
  • ―学力の問題による不本意入学者の場合―
    時岡 良太
    2023 年 44 巻 2 号 p. 89-98
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

     本研究は、学生の主体性が低下する要因の一つとして不本意入学に着目し、「学力の問題による不本意入学者が主体性を育むプロセス」を解明することを目的に行われた。不本意入学を経て主体性が乏しい状態にあったが、その後主体性が高まった経緯を持つ20名を対象にオンラインでインタビュー調査を行い、そのうち13名のデータを対象としてM-GTAにより分析を行った。分析の結果、与えられた状況下での主体性発揮の機会に加えて他者との間で自発的な表現が受け止められると主体性の高まりが促されること、同じ境遇の人の存在等によって不本意感が薄れてくると今いる場所に自分がいる意味を見出していくこと、他者との信頼関係の構築が主体性の育ちのプロセスの各所を促進すること等が見出された。この結果から、学生相談の実践において重要なこととして、主体性の“芽生え”を逃さずに受け止めること、学生と信頼関係を築くことおよび学生が他の場所で信頼関係を築くのを支援すること、他者から影響を受けることの少ない守られた場において自分自身を見つめる機会を提供することという3つの示唆が得られた。

資料
  • 二宮 有輝
    2023 年 44 巻 2 号 p. 99-109
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー

     本研究では、大学に新設されたピア・サポート(Peer Support:以下PS)活動に対して学生が持つニーズを、質問紙調査を用いて検討した。デモグラフィック変数、PS活動の認知、PSとその他の援助資源への援助要請意図、悩みの程度、自由記述から構成されるwebアンケート調査を実施し、主に心理学を専攻とする大学生173名を分析対象とした。分散分析の結果、PSヘの援助要請意図は友人、家族に次いで高かった。次にテキストマイニングを用いて自由記述を分析した結果、PSへの援助要請意図が低く、悩みの程度が高い場合は交流会等、相談以外の支援に対するニーズがあるのに対して、悩みの程度とPSへの援助要請意図の両方が高い学生はPSに対して相談窓口としてのニーズを持っていると考えられた。これらのことから悩みの程度が高い場合は、学生がPSに求める機能はPSへの援助要請意図の高低によって異なることが示唆され、今後のPSで展開すべき活動内容についての示唆が得られた。今後の課題としては、大学生全般の傾向を捉えるために対象範囲を拡大した調査を行うことが挙げられる。

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