抄録
中央アンデスでは標高4000m以上の高原で牧畜が営まれている。交易や輸送を目的とするリャマの移動はあるが、ヒマラヤのヤク牧畜のような上下の季節移動すなわち「移牧」は行われない。家畜のリャマは運搬、アルパカは毛の生産に特化されており、搾乳は行われない。本発表では、ヒマラヤやモンゴルと比較しながら、アンデスの牧畜の特徴である「定住的」「乳利用がない」の要因を論じると共に、アンデス牧畜を考慮に入れた場合に再考を促される牧畜類型論(KazanovやIngold)など、これまで定説とされてきた牧畜理論を検証する。