近年、精神保健福祉の領域では、精神障害の長期入院患者の退院促進事業として、入退院経験を活かした当事者によるピアサポート事業が全国レベルで展開されている。本報告では、北海道浦河町のピアサポーターをめぐって交わされる「応援している」ということばの多義性とそれが使われる多様な文脈を詳細にみていくことで、「ケアという共同性」というテーマに接近する。浦河町には、2007年時点で事業に登録されているピアサポーターは3人いる。彼(女)らの活動は、退院を控えたメンバーのために、外出・買い物に付き合ったり、試験外泊の時に共同住居に一緒に泊まったりすることである。浦河町では、ピアサポーターを中心に多種多様なアクターがかかわり、フォーマルなサポートとインフォーマルなサポートとが接続している。また、「応援している/されている」という二者関係はその行為主体の位置を変換しながら、さらには複数のアクター間の関係へと広がりながら、緩やかな連環構造を形成している。本報告では、こうした関係の連鎖を互酬的な関係として読み解くことで、そこに「ケアという共同性」が埋め込まれていることを明らかにしたい。