抄録
アイヌの祖霊祭祀の変容:1986-2006
北海道教育大学札幌校 百瀬 響
1986年、旭川近文で行われたA家の祖霊祭祀では、同儀礼の参加者の約半数が中途で帰る事態となった。その理由は、近文のアイヌ社会を構成している成員から、同儀礼の様式が「アイヌの儀礼に正しくのっとっているか否か」が問われたためである。これ以降、1991年には祖霊祭祀に関する悉皆調査を試み、2006年、この調査内容を教えて欲しいとの要請を受けて、発表者による調査内容の還元を行う機会を得た。本発表では、2006年に行われた儀礼を中心に、現在旭川近文で行われている祖霊祭祀の実態を発表する。