発話の力、呪文の響き

抄録

スリランカ土着の伝統医療パーランパリカー・ヴェダカマの医療実践において、呪文の読誦はきわめて重要な位置を占めている。呪文は製薬や治療のさまざまな場面で読誦されるが、その意味内容ではなく読誦される際のの響きそれ自体に治療効果が宿るとされる。本発表では、呪文の読誦を「治療効果を高める」というひとつの目的に帰結するような行為としてとらえ、呪文のもつ意味内容でなく響きが重視されていることを、パーランパリカー・ヴェダカマの医療実践にみられる発話の忌避の事例と対比しながら考察したい。