抄録
本発表の目的は、ラオス人民民主共和国のコーヒー生産地における農民と仲買人/協同組合との関係に関する2つの事例を記述し、その関係性を成立させている要因を、「噂」の観点から分析することにある。人類学において噂(rumor, gossip)とは、人びとの行動についての倫理的な判断や集団内の社会的価値を維持する機能を果たすという社会的統合の観点から論じられたり、逆に共同体内の個人の地位を高めるために操作することのできる装置として個人に着目した観点から論じられたりしてきた。だが、これらの研究では、噂が特定の社会関係を形成していく側面について見逃してきた。本発表では、こうした社会関係の中でも取引の関係に注目し、噂が特定の取引の関係を構築する誘因となっていることを論じる。