抄録
本発表は、韓国からの観光誘致に地域振興の活路を見出した対馬が、いかに韓国人観光客を受いれてきたか、日韓交流事業との連関を通じて振り返り、この変遷を韓国人に対する認識の変遷として再構成すると同時に「嫌韓」感情との関連は如何なるものであるのか考察することを目的とする。対馬の韓国人による観光を中心に、韓国への感情について論じるには、対馬の韓国との観光誘致以前から、あるいはそれと平行して行われていた民間、行政によるさまざまな国際交流の存在を忘れてはならない。中でも朝鮮通信使を題材にした交流事業は対馬の地域特性と関わり、韓国との関係を考えさせるものである。本発表では、観光誘致の変遷と供に、2012年に起きた「仏像盗難事件」に端を発する朝鮮通信使再現行列の中止決定とその後の過程を検討し、日韓の政治的な緊張関係が対馬における韓国への認識に与える影響を考察する。