日本文化人類学会研究大会発表要旨集
Online ISSN : 2189-7964
ISSN-L : 2189-7964
日本文化人類学会第52回研究大会
セッションID: F8
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個人発表 F5-F11
香港在住の東南アジア華人社会におけるモノの贈与交換
*佐久間 香子
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抄録
近年、親族研究のリバイバルともいえる家族・親族のかたちを問い直す研究が相次いで出版された[e.g. 櫻田ら2017、信田ら2013、吉原ら2000]。土台となる議論や切り口は違えど、家族的な「つながり」を再考を企図するこれらの研究が目の当たりにしているのは、複数の国や地域に拡散する親族ネットワークのグローバル化、血縁/非血縁的な集団、あるいはLGBTの婚姻に関する法整備など、昨今ますます多様化する「家族」である。こうした「家族」のかたちや親族のつながりを、人類学の重要なテーマとして考察する視座として、モノの贈与交換からみる人間関係の濃度や、情動やコミュニケーションを含めたオラリティを通じた共在の様態と動態を捉えられないだろうか。

その試みとして本発表では、香港在住の東南アジア華人社会におけるモノの贈与交換に注目して、その具体的な実践の様態を報告する。対象とするモノは、ツバメの巣をはじめとする、薬効が期待される特殊中華食材である。ここで「特殊」とする理由は、これらが日常的に消費される食材というより、初潮、結婚、妊娠などを機に女性が健康と美の増進のために積極的に摂取することが望ましいと考えらているがゆえに、贈与の対象となるモノだからである。中華料理において、何らかの薬効が認められる、あるいは期待される食材は枚挙に遑がないため、本研究では、非日常性と、薬効の対象が女性の身体あるいは生命力に充てられている食材に限定する。
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