日本文化人類学会研究大会発表要旨集
Online ISSN : 2189-7964
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日本文化人類学会第52回研究大会
選択された号の論文の187件中1~50を表示しています
2018年6月2日(土)
分科会1 世界遺産と防災
個人発表 A5-A11
分科会2 エスノグラフィから未来を 見る
個人発表 B6-B12
分科会3 医療者向け教育の現場 から人類学の拡張可能性 を考える
個人発表 C6-C12
  • 西部モンゴル遊牧民の生存戦略における減災術と植生利用
    相馬 拓也
    セッションID: C6
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本研究は上記の意義の達成に貢献し、学際型ヒューマン・ジオグラフィと生態人類学の研究手法を融合して、遊牧民の減災術と生存戦略の総体的解明を目的とする。モンゴル遊牧民は地域に内在するあらゆる資源を用いて、過酷な環境への適応戦略を練り上げてきた。しかし、環境共生観を受け継ぐオーラルヒストリーや伝承は失われつつある。そのため本研究では、伝統的な遊牧生活の営まれる西部モンゴル地域(バヤン・ウルギー県、ホブド県、オブス県)を対象に、1. 減災とゾド災害予知の民間伝承、2. 在来薬用植物の利用、3. 季節移動と牧草地巡回、4. 労働強度の測定、の臨地調査を実施した。こうした遊牧民の伝統的な減災術と生存戦略は、地域の固有環境との共存と保全によりもたらされた「変位性適応能」(アロスタシス allostasis)と定義され、遊動生活を現存させる知的源泉としての再評価が求められている。
  • 被ばく者は生活の中でどのような被害を経験したのか
    中原 聖乃
    セッションID: C7
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    マーシャル諸島ロンゲラップの人びとは、1954年に米国が実施したブラボー水爆実験の被害に会い、現在は避難島で暮らしている。これまで、放射線被害については、医学、環境学、放射線化学などの科学的視点から研究されてきた。本発表は、放射能の被害を、被害者当事者の暮らしに現れる被害に関する語りを通じて、被害を受けた当事者の被害認識を「環礁で生きる」という観点から明らかにするものである。
  • 津波タワー・津波ビルへ避難する高知市種崎地区を事例として
    酒井 貴広
    セッションID: C8
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本発表は、近い将来「南海トラフ地震」とこれに伴う津波が襲うと予想されている、高知市沿岸部の種崎地区を事例として、地域住民の間で高まりつつある来るべき災害への「予感」を情報人類学の見地から考察するものである。種崎地区の住民の語りを踏まえると、平地に位置し人工の津波タワーや津波ビルへ避難せざるを得ない状況が、人々の抱く不安の主軸に据えられていると結論付けられる。
  • インド西部地震被災地の事例から
    金谷 美和
    セッションID: C9
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本発表は、2001年に発生したインド西部地震被災地において、新村を建設し集団移転をおこなっている被災者について報告し、大規模災害後の「社会変化」について論じる。グジャラート州カッチ県D村で染色を生業とする職能集団カトリーは、新村を建設し生産拠点を移転させた。すでに97世帯が移住し、社会は平常にもどりつつある。しかし、被災者のライフヒストリーに注目すると、平常化に含みこまれた変化が明らかになる。
  • 食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いた生物文化アプローチ
    田所 聖志, 梅崎 昌裕
    セッションID: C10
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    近年の人類学では、人々の身体や生存と文化生態環境との関わりに関する研究において、人間の生物学的側面と文化的側面の両面からの分析を試みる生物文化アプローチと呼ばれる方法が採られるようになってきた。本発表では、食物摂取頻度調査票(FFQ)を併用した生物文化アプローチを用い、パプアニューギニア、ヘラ州のフリ社会で2008年より始まった大規模な天然ガス開発プロジェクトによる栄養学的・社会的なインパクトを検証する。
  • 広島県在住の中国系住民22世帯の事例を中心に
    謝 春游
    セッションID: C11
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本発表の目的は、中国系住民の来日後の世代間における食生活の差異を明らかにすることである。特に食生活の世代差に注目し、それにより移民自身の自分に対する位置づけおよびホスト社会に取り込まれている状況を検討する。調査対象は、1985年以降来日し、その子供たちが日本で生まれ育っている広島県在住の中国系住民である。本発表では、22世帯の世代間の食生活の差異とその背景について聞き取り調査から得られた知見を報告する。
  • 中国雲南省ハニ族村落における儀礼と宴をめぐる諸実践
    阿部 朋恒
    セッションID: C12
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本発表は、中国雲南省南部のハに族村落における儀礼と宴をめぐる諸実践を事例として、供食と共食によって生まれ、繕われるさまざまな社会関係の諸相を読み解くものである。儀礼の過程そのものではなくそれをとりまく様々な実践を手掛かりとすることで、儀礼と食べることが結びつくハニ族の論理を具体的な事例によって提示し、ひとところに集い、ともに食べる場としての儀礼が何を成し遂げているのかを明らかにする。
分科会4 国家への期待と想像力、 秩序のための交渉と実践
  • 西 真如, 岡野 英之
    セッションID: D1-0
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    現代の世界において国家は、人々の日常生活に深く介入し、その人生に働きかける主体として経験される。本分科会では国家の統治過程を、画一性と合理性を押しつける官僚機構の営みというより、ローカルな想像力と日常的な実践によって立ち上がるリアリティとして捉える。そして現代の国家およびそれに準じる統治主体の様々な装置に関与する人々が、いかなる関係性や交渉をとおして政治的な秩序を産出しているかを提示する。
  • 西 真如
    セッションID: D1
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    治療のシチズンシップとは、ある社会において誰が、どのような条件で、病いの治療に必要な知識や技術、制度にアクセスできるかを問う概念である。国家の側から見れば、国民に治療の機会を提供することは、民族や言語、宗教の違いを超えて人々の「生そのもの」を引き受け、その忠誠を獲得するための手段となりうる。本発表では、エチオピアにおける抗HIV治療体制の成立に至る諸アクター間の交渉過程とその効果について検討する。
  • -内戦後シエラレオネに見るバイクタクシー業と交通秩序-
    岡野 英之
    セッションID: D2
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本発表では、内戦後シエラレオネで見られたバイクタクシー業の発展、および、バイクタクシー業関係者によって組織されたバイクタクシー組合による業務について検討する。シエラレオネの都市交通は、いわゆるインフォーマル・セクターの事業者に依存するところが大きい。一見、混沌とした都市空間において、交通秩序がローカルで日常的な場から立ち上がり、その秩序が国家性を帯びるプロセスについて論じることが本発表の目的である。
  • ナイジェリアの民主化とイボ社会における伝統的権威者選び
    松本 尚之
    セッションID: D3
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本発表では、1999年に民政移管を果たしたナイジェリアにおいて、公平な政治参加を保証する制度として慣行化した輪番制と、ローカルな政治実践との関わりを報告する。特に、三大民族の一つ、イボ人を事例とし、一コミュニティで起きた伝統的権威者の後継者選びを題材として取り上げる。威信を求めた競合と公平性への期待のなかで、人々が輪番制を如何に解釈し、自らの実践と結びつけていくかについて論じる。
  • 独立後南スーダン・ヌエル社会の秩序をめぐる想像力
    橋本 栄莉
    セッションID: D4
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本発表の目的は、独立後南スーダンのヌエル(Nuer)社会における政治秩序を構成する要素を明らかにするとともに、ヌエルの人々の国家と秩序をめぐる想像力について考察することにある。特に、植民地期以降の国家権力の台頭とともに展開してきた紙(waragak)という媒体の力に着目し、人々が住民投票の際、紙のさきに見出していた神/クウォス(kuɔth)と自己の関係性について論じる。本発表では、ヌエル社会における「正当・真正性thuɔk」や「権利cuong」、そして「帰属/家ciℇng」の概念を足掛かりとしながら、外来の権力装置と在来の権威、神話と現代、複数の秩序の様式が複雑に絡み合う中で人々に経験される国家の姿を捉えることを試みる。秩序をめぐるさまざまな想像力と、それに対するヌエルの人びとの実践や語りを取り上げることで、(想像上の)秩序の断続的な模倣と国家の(再)概念化の中で創出される新たな秩序の様式を描き出す。
  • 虐殺後のルワンダにおける安全を希求する想像力と国家
    近藤 有希子
    セッションID: D5
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    1990年代前半に大規模な紛争と虐殺を経験したルワンダ共和国において、国民の安全と治安は重大な関心事項である。これまでルワンダの国家は、開発における「優等生」と称賛されるとともに、その統治が「強権的」だとして非難されてきた。本発表では、そのようなルワンダの政治体制が、統治者の意志と実践だけによるものではなく、地域の人びとの安全を希求する想像力や実践とが交差するなかで、構築し維持されてきたことを描き出す。
個人発表 D6-D12
  • フランスのモン農民における社会イメージ
    中川 理
    セッションID: D6
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
    会議録・要旨集 フリー
    本発表は、難民としてフランスに来たモン(Hmong)農民が、どのようにして平等性とヒエラルキーという二つの社会イメージのあいだの葛藤を生きているかを記述的に明らかにする。とくに、東南アジア山岳地帯からフランスというまったく異なる政治的・社会的コンテクストに「植え替えられた」とき、これらのイメージがどのように再生産されるのかを、国家および在来の人々との関係に注目しつつ分析する。
  • ポスト遊動狩猟採集民ムラブリの事例から
    二文字屋 脩
    セッションID: D7
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本発表は、タイ北部で唯一の遊動狩猟採集民と知られるムラブリ(the Mlabri)を事例に、脱狩猟採集民化を経験したポスト狩猟採集民に対する原始豊潤社会論の妥当性を検証するとともに、生産様式から議論されてきた原始豊潤社会論を、思考様式や交換様式といった視点から再考するものである。
  • 現代フィリピンにおける賭博の実践から
    師田 史子
    セッションID: D8
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本発表は、フィリピン・ミンダナオ島の賭博者による賭けの予想行為と、結果の受容の実践を通じて、賭けに勝つために「当てにできる」信念が生成され強化される過程を考察する。違法数字宝くじや闘鶏などに興じる賭博者が信じているジンクスや知識、賭けの技法は、「参照・解釈・共有」という契機からなる弁証法的な循環プロセスを経て強化し、真理化されてゆくとともに、同じ結果の反復を契機として新しい信念として確立してゆく。
  • 中国広州市におけるある「老人の家」の麻雀遊びの事例から
    劉 振業
    セッションID: D9
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本発表では、中国における麻雀の役割を考察する。具体的には調査地である中国広州市のX社区の星光老年の家での麻雀を詳細に描写することによって、賭博や互酬性による新たな社交の可能性を提示したいと考える。麻雀は遊びの一種として、中国においてはさまざまな場面で目にする。しかし、麻雀は常に賭博をはじめ、その中毒性による家族関係の悪化や社会生活の撹乱など、多様な負のイメージが認められる。発表者は、星光老年の家にて調査を続けてきたが、その中で観察される麻雀が、異なる形でプレイされていたのである。星光老年の家とは、中国民政部が2001年に高齢化の加速のために実施した星光計画によって、老人のためにサービスを提供する場として建てられたものである。元々実力と偶然を両方が勝利に必要な麻雀というゲームを、運という偶然の部分を強化して不確実性を好む傾向を強調する一方、ゲーム後に認められる不完全な互酬性によって不確実性がもたらす勝敗の不平等的な関係を短期間で修正し、調和関係に向かわせるという複雑な仕組みが、本発表の事例には見いだせる。
  • 現代フィジーにおける文書と儀礼的発話の言語人類学的考察
    浅井 優一
    セッションID: D10
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    本発表では、フィジー諸島のダワサム地域で起きた首長の即位儀礼の開催を巡って起こった対立を事例に、この対立が植民地期に作成された文書を基点とした、それ「以前」と「以後」という二つの社会文化的カテゴリー間のズレとして意識化される過程、および、そのズレを解消/矯正しようとして開催された首長の即位儀礼とそこで為された儀礼的発話の特徴を考察し、現代フィジーにおける儀礼的秩序について言語人類学の視座を用いて考察する。
  • ~神女の語りの記録から~
    山本 恭子
    セッションID: D11
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/22
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    イザイホーは沖縄県久高島において12年に一度、行われてきた女性が神女に就任するための儀式である。そして神女は年間20以上行われる神行事を支える重要な役割を担ってきた。しかし、イザイホーを受けるものがいなくなり、1978年を最後に行われてない。現在イザイホーを受けた神女は最も若くても70才を越える。本研究ではイザイホーを受けた女性の生涯を振り返っての語りから、イザイホーが神女に与えたものについて考えた。
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