抄録
本稿の目的は、音楽家たちによるインプロヴィゼーション(即興演奏)の分析をつうじて、音階を編成するために音楽家たちが利用している実践的方法を特定することである。本稿のデータは、東京近辺において2015年より実施されたフィールドワークに基づいている。こうした作業をつうじて、音階や和音といった音組織の理解可能性が、まずは当の音組織を編成する人々によって取り組まれている適切性によって与えられているということが主張される。その上で、音組織を編成するための音楽家たちによる実践的な方法と、研究者たちによる理論的な方法の関係が考察される。