日本文化人類学会研究大会発表要旨集
Online ISSN : 2189-7964
ISSN-L : 2189-7964
日本文化人類学会第55回研究大会
会議情報

分科会2 リ/ゾナンスへの人類学的アプローチ
パプアニューギニアのダンス歌謡における在来舞踊のリ/ゾナンス
*諏訪 淳一郎
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. G05-

詳細
抄録

独立以降に流行してきたパプアニューギニアのいわゆる「ロコル」歌謡では、現地語の音声に起因する独特の抑揚、在来語や共通語の使用、メラネシア的な生活実感のある歌詞の内容などによってグラスルーツの生きられた世界を行為遂行的な「いま=ここ」の中に生成する。なかでも、在来舞踊に使われる歌謡からの流用は極めて大きな特徴である。本発表では、音楽のようなものにおける反復的なものとして「リ/ゾナンス」という概念を新たに提唱する。そして、音楽人類学の目的は、民族誌という現地の人との共同作業を通じて、これをケーススタディとしてリ/ゾナンスについて概念化することにある、と再定義する。そして、在来舞踊の流用というロコル歌謡の一側面に関して、これをグラスルーツの聴衆とアーティストによる対話であり、しかもこの対話はリ/ゾナンスと相互連関している、と明らかにする。在来舞踊の流用により「先祖の時間」とつながったロコル歌謡では、ダンスへの熱狂というインテンシティが傍観することのできない「器官なき身体」の場を空間に生成するとともに、踊りという身体の所作が「見る=見られる」エージェンシーの関係性としてのアッサンブラージュを生み出す。そこにおける音楽の響きは、アクタントを知覚的広がりとして出来事化するリ/ゾナンスである。さらに、その踊りは個人の身体の独立した動きではなく、間身体的に連動した一つの場としてのみ立ち現れる。

著者関連情報
© 2021 著作権は日本文化人類学会に帰属します。
前の記事 次の記事
feedback
Top