抄録
本稿では、バイオテクノロジー(遺伝子組換え操作)を事例に、先端科学技術管理と化学物質管理の規制体系やアプローチ構造に関する相関性を検討・分析することを試みる。その際に、EU、アメリカ、そして日本を対象に、先端科学技術分野と化学物質分野に関する科学的不確実性を伴うリスクに対する法的予防措置に着目し比較検討を行った。その結果、両分野の規制体制やアプローチ構造に一定の相関性があることが明らかになった。各々の分野での先行研究は存在するものの、先端科学技術及び化学物質の両分野の境界線に対する相関関係に着目した研究は希少性があり、今後の不確実性を伴う予防的なリスク政策や科学技術政策分野への第一歩が示された。