日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-155
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点眼薬における催奇形性リスクに関して:既存の情報からの考察
*倉田 昌明木藤 学志根本 真吾貞本 和代榊 秀之
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抄録

【目的】点眼薬は経口薬等の全身投与薬に比べ、全身投与量が相対的に低く、催奇形性リスクは低いことが想像できる。しかし、点眼薬の催奇形性リスクについて、非臨床と臨床を含めた横断的な調査はない。今回、既存の情報を基に、点眼薬の催奇形性リスクを評価した。

【方法】以下の3つの方法で評価した。1.既存の催奇形性TTC(Threshold of toxicological concern)と、点眼薬で想定されるヒト全身用量域の比較、2.催奇形性ポテンシャルのある薬物で、点眼薬として使用されている薬物の調査、3.典型的な催奇形性薬物の非臨床と臨床での催奇性発現域と、点眼薬で想定されるヒト全身用量域の比較。点眼薬濃度は0.01%から1%、点眼容量は0.04 mL/眼/回、点眼頻度は両眼に4回/日、ヒト体重は60 kgと仮定し、点眼薬のヒトで想定される全身用量は0.0005から0.05 mg/kg/日と算出した。代表的な催奇形性薬物の無作用量等の情報はCTDや文献等から収集した。

【結果】1.点眼薬で想定されるヒトの全身用量域と、既存の催奇形性TTCは概ね一致していた。2.催奇形性ポテンシャルのある薬物を点眼薬として使用する場合の全身用量は、全身投与薬として使用する場合に比べ10から1000倍低く、点眼薬使用の場合は十分な安全マージンが得られた。3.典型的な催奇形性薬物の催奇形性発現閾値と、点眼薬で想定されるヒト全身用量域は重なっていたが、概ね0.01%濃度以下の点眼薬であれば、一部の性ホルモンを除いて10倍以上の安全マージンが得られていた。

【結論】今回の調査から、点眼薬の催奇形性リスクは低いことが示唆された。特に0.01%濃度以下の点眼薬は、性ホルモン等を除いて催奇形性リスクが低いことが明らかとなった。この結果は、点眼薬開発時おける胚胎児発生毒性試験の要否を検討する価値を示している。

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