場の科学
Online ISSN : 2434-3766
総合知を科学する
菊池 純一今 智司原田 隆土橋 正屋代 隆藤川 君江赤司 展子仲上 祐斗田中 康之
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2026 年 5 巻 3 号 p. 5-36

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抄録
【鼎談その1の概要】「総合知」の場つくりは、失敗したのか この鼎談では、「総合知を科学する」という漠としたテーマの下、国の政策の大綱的なコンセプトである「総合知」とは何か、そして、その知に係る「場つくり」は、失敗したのであろうかという問いを切り口として、論点の深堀りがなされた。 国の政策を検証することに関わる「追跡評価の目線」に基づくと、トランスディシプリナリー(超学際的)アプローチの領域について、総論的には理解できるのだが、各論的に、企画書や、成果の特許や論文などが可視化できている具体的な事例の中では、「総合知の特性」の可視化は、意外と、少なく、情報収集や「知の共有」においても課題が累積しているといえる。 「知的財産の創成及び管理に関わる目線」に基づくと、「総合知」とAI「生成情報」、そして、「場におけるファシリテーターの機能」によって、「モノ・コトつくり」の文脈形成のプロセスが稼働し、知の「共有知化」が進展し、新たな「知の活力」となる「協創知」が創成される。その構図の中で、ファシリテーターの役割は極めて重要である。  アントレプレナーシップ教育に関わる「エコシステム連携の目線」に基づくと、組織的なリエゾン機能を構築し維持することが要所となる。「研究の場」と「教育の場」が互いに躍動的に連携することによって、融合というよりも「フュージョン」という統合に近いレベルの一体化が進み、従前の産学連携に「場の再生」が生まれることが期待できる。 【鼎談その2の概要】「総合知」に係る識者コメントに基づく諸課題 「弁護士の目線」の視座として、「総合知」という概念が、実質的実体として機能するには、単なる専門知識の外延ではなく、新たな知識の創出が必要である。例えば、生成AIは単なる技術的道具であり、生成AIによる新たな知識創出を主張する者はそのことを立証する責務がある。  「医師の目線」の視座として、地域医療学における「総合知」は、患者のウェルビーイング状態を維持することに対処する関係各位の協働的な合意形成に基づいて、創成されつつ、かつ、関係各位の共有知として蓄積される。それゆえ、プロフェッショナルな人材育成を維持しつつ、医療と医学の連携のみならず、介護等を含めた「職種連携」を円滑にしつつ、生成AI等を利活用し、情報の統合化を推進するべきである。  「教師の目線」の視座として、変化が激しく先を見越せない時代においては、「知をつなぎ、価値を生みだす力」、そして、「分野を越えて知を統合し社会実装へとつなげる力」が求められる。「無から有を作る」には、自由な思考回路を発揮してもらうような「教場」や「自主活動の場」が必要になる。 【鼎談その3の概要】「総合知」のモノ・コトつくり、これから 今回の議論から、三つほどの結論が得られた。その一つ目の結論として、「総合知」は、現代社会システムの中で新たなグループウェア、あるいは、特定のチームウェアに類する「共有知」として深化しつつある。従来の共有知とは違う「現場」の様相を精査することが望ましい。  二つ目の結論は、生成AIやフィジカルAIとの分業体制の時代が訪れるのは早まっているという認識の下、特に人材育成については、大学院や学部の教育のみならず初等中等教育も含めた包括的なアプローチが必要である。社会のエコシステムの中で、「知の共有化」をお押し進めることを支援することが望ましい。 三つ目の結論は、今後しばらく間、「創る側、使う側、捨てる側」の「三者の相互連携の場」においては、生成AI、フィジカルAI等の情報基盤を組み合わせることによって、「協創知の可視化」(Visualization of Trans-Intelligence throughout Co-innovation )を実現するための工夫を具体的に切り出していくことが望ましい。「社会実装学」という領域を編成するべきなのであろう。
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© 2026 協創&競争サステナビリティ学会
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