抄録
要 旨
背景と目的:我が国では、高齢化が進む中、健康寿命延伸に向けた運動器症候群(以下ロコモとする)の予防が注目され
ている。ロコモの代表的な要因は骨粗鬆症であり、骨粗鬆症の予防と早期発見への取り組みは重要な課題である。骨粗鬆
症の原因となる生活習慣の一つには喫煙があり、多くの研究から喫煙者における骨密度低下や骨折リスク増加が認められ
ているが、喫煙指数と骨密度の関連については未だ明らかとなっていない。そこで我々は、女性における喫煙指数と骨密
度の関連を検討することで、喫煙指数から導き出される骨密度低下リスクを評価し、さらに骨粗鬆症予防啓発に用いるこ
とを視野に入れて本研究を開始した。
対象と方法: 2008 年4 月1 日から2017 年3 月31 日までに川崎医科大学附属病院の人間ドックで骨密度検査を実施した女
性で、喫煙歴の記載漏れがある者を除外した328 名のうち、現在喫煙者19 名、過去喫煙者16 名を分析対象とした横断研
究である。健診データより年齢、BMI、閉経の有無、Ca、IP、HbA1c、eGFR、Alb、喫煙指数、骨密度を使用した。骨密度
は DXA 法で測定した腰椎と大腿骨頸部のT スコアを用いて種々の因子とともに検討した。
結果:現在喫煙者の年齢は49.9±11.7(SD)歳、BMI は20.5±3.8(SD)㎏/㎡、過去喫煙者の年齢は51.4±9.6(SD)
歳、BMI は20.4±2.9(SD)㎏/㎡であった。重回帰分析の結果、喫煙指数と腰椎T スコアの偏回帰係数は-0.65
(p=0.01)であり、女性の喫煙指数と腰椎Tスコアには有意な負の関連が認められた。喫煙指数と大腿骨頸部T スコアの
偏回帰係数は-0.43(p=0.06)であり、有意ではないが関連する傾向がみられた。
結論:女性の喫煙指数と腰椎骨密度には有意な負の関連が認められ、大腿骨頸部でもその傾向が認められた。現在の喫煙
の有無に関わらず喫煙の累積状況にも着目し、喫煙指数が高い女性に対しては特に積極的に禁煙の必要性を伝え、骨密度
検査を勧める必要性があることが示唆された。