2023 年 60 巻 5 号 p. 292-296
von Willebrand病(VWD)はvon Willebrand因子(VWF)の量的・質的異常に起因する遺伝性出血性疾患である.VWDの病因・病態は極めて多様で,VWFの量的減少症のType 1,質的異常症のType 2,完全欠損型のType 3に分類され,Type 2にはさらに2A,2B,2M,2Nの4亜型が存在する.VWDの症状は,一次止血障害に起因する皮膚・粘膜出血が主体であり,女性では過多月経を認める.凝固第VIII因子(FVIII)が著明に低下するType 3やType 2Nでは二次止血障害に起因する関節内・筋肉出血が見られる.皮膚・粘膜出血や過多月経は健常者でも経験するため,出血症状のみで健常者と鑑別するのは困難である.VWFレベルが30%未満の場合にVWDと診断するが,VWFは種々の要因により変動し,健常者の血漿VWFレベルは50–200%と幅があるため診断に迷う例も少なくない.VWDの治療は,酢酸デスモプレシンあるいはVWF濃縮製剤を用いる.VWF濃縮製剤としては,血漿由来VWF/FVIII製剤に加え,遺伝子組換えVWF製剤が使用される.日本血栓止血学会で新たに作成された「von Willebrand病の診療ガイドライン 2021年版」に基づき,VWFの特徴やVWDの多様な病態を正しく理解し,正確な診断,適切な治療を行う必要がある.