抄録
日本における発達障害のある学生のインクルージョンは,近年,特に高等教育機関において支援体制の構築が進みつつある.米国等諸外国においては,発達障害に関連したニーズに対して,ケースバイケースで適切性を考慮したうえで,テクノロジーの活用,試験における時間延長や別室受験など,多様な環境調整を提供することが一般化している.日本国内の教育機関ではそうした基本的な共通理解は醸成途上にあり,そうした手段が得られにくい状況は残されているが,米国や国内の大学でも,発達障害のある生徒や学生を対象とした先進的な取り組みが始まっている.インクルーシブ教育システムを基礎とする教育制度を持つ国においては,本来,教育機関には,こうした基礎的な教育機会保障(合理的配慮)の問題を超えて,個々の発達障害のある児童生徒・学生の強みを評価し,社会的成功につながる学びの機会を最大化するサービスを拡げることが求められ
ている.