抄録
現在高齢期にある知的障害者は,制度成熟過程のなかで青壮年期を経過し,また,当時の社会の価値観等のなかで,負の影響を受けながら今日に至っているケースが少なくはないものと想 定される.また,世帯構成を見ても,より高齢の家族による支援が限界を迎えるケースが年々増加していることも事実である.にもかかわらず,わが国の高齢障害者支援については,高齢者施策・ 障害者施策のいずれを主軸とするべきかといった議論は不十分な状況であり,いずれの制度においてもニーズへの配慮が不十分という,いわば制度の狭間にある. 本論では,介護保険制度施行により顕在化した制度併用に係る調整規定を中心に,利用者負担問題および個別給付の課題にも言及しつつ,共生社会の視点をふまえた高齢知的障害者支援に関して,高齢者福祉に