抄録
知的障害者が高齢になり,要介護状態になったとき,介護保険に支援の枠組みを移すのか,それとも知的障害者福祉が支援を継続すべきなのか,さまざまな意見がある.実態としては,介護保険への移行やサービス併給はそれほど見られず,障害福祉サービスが高齢利用者への支援を継続している場合が多い.しかし,この支援に支援者たちが困難を感じているのも確かである.その困 難とはどのようなことなのかを本稿において探ってみたい.また知的障害者の認知症について,そして高齢期支援を考える際に避けて通れないターミナルケアにかかわる課題について,高齢期支援に特化した入所施設に勤務する私の経験を踏まえて述べさせていただく.狭義の研究者ではない筆者にはエビデンスにもとづいて客観的に論文をまとめることはできない.しかし経験のなかで得た 直感と認識にも,高齢知的障害者支援のポイントをつく何かがあるのではないか,と考えている.