抄録
本研究は,成人期から支援を開始した知的発達に遅れのない自閉スペクトラム症者 2 事例の適応行動について,就労困難を主訴に相談を開始した時点から企業就労後まで追跡調査し,就労前の課題が就労後に解消されるのか,また,解消された場合の要因について検討した.Vineland- II適応行動尺度による定量評価と日常生活に関する書面と聴取による定性評価の結果を就労前後で 比較したところ,就労後,身辺自立と生活リズムなど日常生活スキルの一部が共通して確立されて いた.また,職場での適応状況は,企業の評価が高く良好であった.専門機関による支援には,就労とともに一部の適応行動の改善に効果があることが示唆された.しかし,社会性領域を含め社会 生活全般における適応行動は客観的に低い状態で,良好な職場での適応状況と乖離が認められた. 成人期から支援を開始した場合,就労に加え,家事スキルや余暇活動等への支援が必要であること が推察される.