抄録
本研究では,知的障害特別支援学校における道徳教育の推進状況を明らかにすることを目的とし,質問紙調査を実施した.調査では,全国の知的障害特別支援学校 748 校に質問紙を配布し,299 校の回答のなかから不備のなかった 292 校を分析の対象とした.調査の結果,道徳教育推進教師の配置率(61.3 %)と年間指導計画の作成率(60.6 %)が,小・中学校と比べ特に低い値となった.その背景には,道徳科の設置状況(小学部 18.3 %,中学部 20.9 %,高等部 30.1 %)が関連しており,道徳教育推進教師の配置率,年間指導計画の作成率および活用状況は,道徳科を設置している学校ほど配置率,作成率が高く,活用状況が良好であった.道徳科の設置状況にかかわらず,道徳教育のさらなる質的な充実を図るためには,道徳教育推進教師を中心に全教師が協力して全体計画および年間指導計画の作成に携わる等,道徳教育を効果的に展開する校内体制づくりを進めることの重要性が示唆された.