2015 年 13 巻 p. 74-86
首都直下地震をはじめ、多くの大規模災害が予測されている我が国では、防災教育の取り組みが広く行われている。しかし、その手法に関しては、専門家の「個の有限性」や教育の効果測定といった課題が既に指摘されており、より住民の安全に資する手法の開発が求められている。
本研究では、住民は防災に関する一定の知識を持っているが、知識が構造化されていないために、具体的な防災行動に結びつかないのではないかという関心から、住民の防災知識構造に着目した防災教育および評価手法の開発を試み、その試行を行った。試行は、既存の防災教育の課題であった物理的制約を解決するため、ソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS) を通じて行い、首都直下地震について参加者間で意見交換を行うことで、試行前後で防災知識構造が拡大・深化がみられるかを測った。
試行後、頻出語の集計、グラウンデッドセオリー法を用いた内容分析、共起ネットワーク分析、コンコーダンス分析をもとにしたコロケーション統計の、4つの分析を行ったところ、試行の前後で参加者の防災知識構造には拡大・深化がみられた。とくに、試行前では震災直後の対応に集中していていた参加者の関心が、試行後では、震災直後の対応のみならず、事前の防災対策にまで拡大し、その内容も深化したことは、SNSを用いた意見交換によって参加者が相互に学び合う事の、防災教育上の効果について可能性を示したといえる。