災害情報
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特集 東京電力福島第一原子力発電所事故から5年―放射線災害と情報―
生活復興と情報
丹波 史紀
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2016 年 14 巻 p. 56-62

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抄録

災害時の情報提供は、災害時は一時的な避難だけを想定し危機管理対応を考えがちであるが、今回のような長期間にわたる避難生活をふまえた対応方法を検討する必要がある。復旧・復興過程における復興政策に対し、被災当事者に十分な情報が提供されているか重要である。

原子力発電所事故による被災者の多くは、ふるさとを追われ、避難する過程で家族や地域がバラバラになった。避難を余儀なくされた自治体は、住民に対し基本的な行政サービスを提供することすら困難になるほど広範囲に住民が離散している。被災自治体の多くは、広報誌の発行やタブレット端末による情報提供サービスも行われている。

福島大学では、2011年9月に双葉郡の8町村に済んでいたすべての世帯を対象にした住民実態調査(以下、「双葉8町村調査」)を実施し、「広域避難」や「家族離散」の実態を明らかにした。さらに、震災以降の新たな二次的な被害が、健康や仕事などにも現れている。

通常の自然災害に越えた被害の事態に、新たな被災者支援の法制度を必要としていた。また、地域の復興に関わっては、長期避難者の生活拠点(町外コミュニティ)の整備をはかる計画が被災自治体のいくつかで計画された。

住民の生活復興は、「帰る」「帰らない」という単一的な復興の道筋ではなく、被災者の生活再建を何よりも最優先し、「帰還」「再定住」「再統合」の何れもが選択できる「複線型復興」という視点が必要である。

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© 2016 日本災害情報学会
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