2017 年 15 巻 1 号 p. 41-51
東日本大震災を契機にして,災害デジタルアーカイブは数多く構築されるようになってきた.昨今では,災害デジタルアーカイブの利活用が徐々に進められている.本稿では,災害デジタルアーカイブ中のコンテンツを利用して作成された多賀城市防災教育副読本資料集の作成過程を整理するとともに,作成過程の関係者へのインタビュー調査を通して,災害デジタルアーカイブの利活用の実践にもとづいて,災害デジタルアーカイブの効果や課題を考察した.本稿の主な分析結果は,次のようにまとめられる.1)作成メンバーだけでは集めることのできなかった豊富な写真の情報源として,市が構築した東日本大震災に関するアーカイブが存在していたこと,2)アーカイブだけではなく,当該アーカイブを運営・管理するアーキビストに相当する人物が存在していたことによって,アーカイブからの写真の選定が効果的に行われたことの2 点が実証的に確認された.