2011年の東日本大震災においては、首都圏のみならず仙台市をはじめ他の地方都市においても帰宅困難者問題が発生した。将来発生が懸念される南海トラフ地震等では、地方都市において同様の帰宅困難者が発生する可能性が高く、事前に備えを行い、発災時に他の緊急対応に注力できる準備をしておくべきである。そこで、本研究では、東日本大震災の被災都市の帰宅困難者の発生状況や、被災都市及びそれ以外の帰宅困難者対策を実施している都市の調査から、各地方都市が直面しそうな課題および有用と考えられる対策を抽出し、求められる帰宅困難者対策を考察した。
研究成果として、地方都市の帰宅困難者対策の留意事項としては、駅周辺に相当数の帰宅困難者の発生が見込まれる場合、駅周辺の指定避難所は住民が避難する施設として帰宅困難者には別施設を用意して混在させないことが重要であること、新幹線沿線に位置する都市においては新幹線が地震で停車すれば、多数の乗客がその場で帰宅困難者となる可能性を認識することが重要性であること等を指摘した。また、既存の帰宅困難者対策の事例から、他の地方都市においても有用と考えられる対策例として、必要な帰宅抑制を推進する事業者の公開制度、地震発生後に一時滞在施設へ建物安全確認の技術者を派遣する制度等の有用性を示した。さらに、鉄道事業者と地方公共団体の連携スキームについても提案した。