2018 年 16 巻 2 号 p. 247-259
ある地域が効果的かつ適切な防災対策を実施するためには、地形条件や人口動態、高齢化などといった地域特性を踏まえた防災対策を講じることが重要である。しかしながら、自治体や地域住民等の防災活動の実践者が自ら地域に関する情報を網羅的に収集し地域特性を解釈した上で、適切な対策手法を選定するまでには多くの時間や労力を要する。そこで、筆者らは防災活動の実践者による効果的かつ適切な対策手法の選定を支援するために、実践者の活動地域の情報を横断的に集約し、他の自治体や地域と比較して自らの自治体や地域における災害特性の特徴を把握できる相対評価を踏まえた形で情報提供する「地域特性情報ツール」の開発を行った。また、本ツールの有効性を明らかにするため、想定利用者である自治体の防災担当者や地域の防災リーダーに対してヒアリング調査を行い、その効果を検証した。結果として、本ツールはユーザの活動地域における災害特性が分かりやすく提示されており、災害特性の理解に役立ったとのコメントが得られた。一方で課題としては、人口密度や昼夜間人口数、自主防災会結成率など、より詳細な地域の社会動態情報も閲覧したいとコメントを得た。これは、実践者が地域特性に関するより詳細な情報を必要としていることを示しており、本ツールではその情報を地域間で相対評価し分かりやすく提供することで、防災対策の検討や実践につながるものと考えられる。そのためには、本ツールの拡張に向けてオープンデータの利用・流通の促進や情報をすくい上げる仕組みが必要であることが示唆された。