災害情報
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人流データを用いた警戒期における大規模避難状況の推計
~令和2年台風第10号襲来時の事例からの試み~
宇田川 真之
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2021 年 19 巻 2 号 p. 133-143

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抄録

本研究では、警戒期の広域的な住民避難支援活動業務の改善を長期的な目標に、警戒期における大規模な住民避難状況の把握手法として、準リアルタイムに提供される人流データの有用性を検証した。大規模な河川氾濫や火山噴火などの警戒期には、事前に広域的な避難が必要となり、行政機関では移動手段や避難施設の確保など住民の避難支援活動が求められる。域外への避難が必要な区域内の人口動態を準リアルタイムに把握できれば、避難支援活動の計画立案等に資すると期待される。そこで、2020年から全国的に準リアルタイムに提供の始まった携帯電話の管理情報にもとづく人口滞在データを利用して、比較的規模の大きな事前避難の行われた令和2年台風第10号襲来時の熊本市における1時間単位での人口推移を事例に分析を行い、データの有用性を考察した。人口動態の予測では、日単位および週単位の周期性とともに、不定期な祝日や天候等の影響を勘案できる時系列モデルを新たに用いた。そして区域内の居住者と来訪者を分離して解析することにより、それぞれの異なる人口動態を明確にした。データ解析の結果、氾濫区域内の滞在人口の増減とともに、居住者における台風襲来時の昼間の外出抑制や夜間の人口減少、来訪者の宿泊施設の存するエリアでの増加などの人口動態を抽出し、本手法の有用性と今後に必要な改善策を示した。

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© 2021 日本災害情報学会
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