災害情報
Online ISSN : 2433-7382
Print ISSN : 1348-3609
最新号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
査読原稿
  • ―「ネットワーク1・17」の分析に基づいて―
    大牟田 智佐子, 澤田 雅浩, 室﨑 益輝
    2021 年 19 巻 2 号 p. 85-95
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    災害対応では発生から応急対応、復旧・復興を経て被害抑止・軽減に至るサイクルを循環させることが望ましいとされる。防災機関としての放送においてもこのサイクルに則した報道を行い、被害抑止・軽減に貢献することが求められる。そこで、災害対応サイクルに則した報道のあるべき姿や課題を明らかにするため、阪神・淡路大震災以来24年以上継続するラジオ番組を対象に、放送内容の特徴とその変化を分析した。その結果、一つの災害に絞って長期的に災害報道を継続すると災害対応のサイクルに沿うように報道内容も変遷していたことがわかった。また一つの番組を続けるなかで、学識経験者や支援者らが「おなじみ」となる程度まで繰り返し出演することにより放送内容を深めることが可能となり、長期災害報道のためには重要であることが明らかとなった。

  • 佐野 浩彬, 伊勢 正, 半田 信之, 磯野 猛, 花島 誠人, 田口 仁, 臼田 裕一郎
    2021 年 19 巻 2 号 p. 97-108
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    本研究では平成28年熊本地震における公共土木被害の災害査定業務を事例に,被害情報の収集・集約・管理における情報システムの活用について考察した.熊本地震発生後から行われた公共土木被害の情報収集・集約・管理については,パトロールメンバーが収集した情報を熊本県各振興局が集約し,各振興局が集約した情報を県庁に報告する業務フローが行われていた.この際,当初は紙や写真等による報告が行われており,上位組織が取りまとめる際に再度情報の入力・整理を行う必要が生じていた.そこで,Web-GISを基盤とした情報システムを用いた情報収集・集約・管理を行うことで,パトロールメンバーが収集した情報を一元的に集約・管理することを可能にし,振興局や県庁では集約された情報の利活用が容易になるようにした.県職員へのインタビューからは,情報システムを利用することで被害情報の入力・整理等にかかる負荷が軽減されたことや,情報管理を適切に行うことで外部組織への対応などを効率的に行うことができる可能性が指摘された.一方で,利用者に応じた閲覧・編集等の利用権限設定の問題や,実際の災害査定業務との関わりを意識した活用イメージ,業務に必要となる情報の属性,その他システムとの連動,外部からの情報支援体制が課題として明らかになり,これらは情報システム導入・活用の必要条件になると考えられる.

  • -重層的管理を伴う上水の早期復旧を対象とした試み-
    千葉 啓広, 新井 伸夫, 倉田 和己, 荒木 裕子, 福和 伸夫
    2021 年 19 巻 2 号 p. 109-120
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    上水の供給は、水源から受益者(住民や企業)に届くまでの間、複数の管轄に分かれて管理されており、平時でも全体像の把握は難しい。南海トラフ地震のような広域大規模災害時において、管轄を超えた連携を行うためには事前の検討が必要であるが、現状は基本的な情報共有も十分とはいえない。そこで、愛知県西三河地域の上水道の供給経路についてグラフ化を行い、上位管理者も交えた、災害時の連携を検討する継続的な議論の場に適用した。その結果、連携の具体案が示され、前年度との比較から、①テーマの継続性②上位管理者との対話③グラフ化の取組みによる連携対象の可視化の3点が、地域連携策の具体化に有用であると認められた。また、より実効性のある連携策の検討場面への適用を念頭に、供給割合(量)を考慮したグラフの別図に対して、自治体の防災担当者から、連携に向けた基礎資料となり得ることが示された。一方、想定される災害時の上水の供給状況なども踏まえた情報提示が必要など、情報提示のあり方としての改善点も提示された。

  • 和田 友孝, 前川 華奈, 大月 一弘
    2021 年 19 巻 2 号 p. 121-131
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    世界各地でテロや火災などの突発的災害によって多くの死傷者が発生している。このような災害は最初に局所エリアで発生し、広がっていく災害である。このような局所的突発性災害の発生を迅速に検知し、リアルタイム性の高い災害情報を被災者に提供することを目的として、我々は緊急救命避難支援システム(ERESS)の研究開発を行っている。このシステムは、スマートフォンなどの携帯端末に搭載されているセンサを利用して、人の動きのデータを無線通信で収集することにより災害を迅速に検出しようとするものである。従来のERESSでは一箇所で災害が起きた場合の避難経路を端末に表示し、避難誘導を行っていたが、複数箇所の災害に対しての避難誘導は考慮されていなかった。そこで本論文では、複数箇所の災害発生時の避難誘導方式を提案する。実際に複数箇所で災害が起きた場合の避難誘導実験を行い、その有効性を検証する。

  • ~令和2年台風第10号襲来時の事例からの試み~
    宇田川 真之
    2021 年 19 巻 2 号 p. 133-143
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    本研究では、警戒期の広域的な住民避難支援活動業務の改善を長期的な目標に、警戒期における大規模な住民避難状況の把握手法として、準リアルタイムに提供される人流データの有用性を検証した。大規模な河川氾濫や火山噴火などの警戒期には、事前に広域的な避難が必要となり、行政機関では移動手段や避難施設の確保など住民の避難支援活動が求められる。域外への避難が必要な区域内の人口動態を準リアルタイムに把握できれば、避難支援活動の計画立案等に資すると期待される。そこで、2020年から全国的に準リアルタイムに提供の始まった携帯電話の管理情報にもとづく人口滞在データを利用して、比較的規模の大きな事前避難の行われた令和2年台風第10号襲来時の熊本市における1時間単位での人口推移を事例に分析を行い、データの有用性を考察した。人口動態の予測では、日単位および週単位の周期性とともに、不定期な祝日や天候等の影響を勘案できる時系列モデルを新たに用いた。そして区域内の居住者と来訪者を分離して解析することにより、それぞれの異なる人口動態を明確にした。データ解析の結果、氾濫区域内の滞在人口の増減とともに、居住者における台風襲来時の昼間の外出抑制や夜間の人口減少、来訪者の宿泊施設の存するエリアでの増加などの人口動態を抽出し、本手法の有用性と今後に必要な改善策を示した。

  • 加治屋 秋実, 赤石 一英, 横田 崇, 鶴崎 浩人
    2021 年 19 巻 2 号 p. 145-155
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    2019年9月、大島町では、台風第15号の接近に伴う暴風により、住家・非住家損壊1522件等の被害が発生した。このときの避難率は4%であった。その約一ヵ月後にも台風第19号が接近し、避難率は11%に向上した。この避難率の向上は、台風情報の報道の効果や台風第15号による被災経験が影響した結果であると考えられた。これらの台風の事例における避難行動の分析結果から、住民は、避難勧告によって避難の判断を行ったが、台風の接近や身の危険を感じたことによって実際の避難を開始したと考えられた。アンケート調査においても住民の避難した理由は、テレビ放送や雨等の状況によって避難したという回答が多かった。そして、避難のきっかけとするために、雨等の詳しい予想、被害の状況、災害の危険性や切迫度に関する情報が必要という意見が多かった。

    以上のことから、住民の自主的な避難を促進するためには、危険が迫っていることを真に感じられるような災害の危険性や切迫度を表す情報が有効ではないかと考える。具体的には、地域特性を反映した過去の災害に関する資料である。このような資料を行政と住民が共有し、避難の支援情報として活用すれば、住民が災害の危険性や切迫度を身近にイメージできるようになり、自らが避難の判断を行って、避難行動を起こすことにつながるものと期待される。

活動報告
feedback
Top