2019年9月、大島町では、台風第15号の接近に伴う暴風により、住家・非住家損壊1522件等の被害が発生した。このときの避難率は4%であった。その約一ヵ月後にも台風第19号が接近し、避難率は11%に向上した。この避難率の向上は、台風情報の報道の効果や台風第15号による被災経験が影響した結果であると考えられた。これらの台風の事例における避難行動の分析結果から、住民は、避難勧告によって避難の判断を行ったが、台風の接近や身の危険を感じたことによって実際の避難を開始したと考えられた。アンケート調査においても住民の避難した理由は、テレビ放送や雨等の状況によって避難したという回答が多かった。そして、避難のきっかけとするために、雨等の詳しい予想、被害の状況、災害の危険性や切迫度に関する情報が必要という意見が多かった。
以上のことから、住民の自主的な避難を促進するためには、危険が迫っていることを真に感じられるような災害の危険性や切迫度を表す情報が有効ではないかと考える。具体的には、地域特性を反映した過去の災害に関する資料である。このような資料を行政と住民が共有し、避難の支援情報として活用すれば、住民が災害の危険性や切迫度を身近にイメージできるようになり、自らが避難の判断を行って、避難行動を起こすことにつながるものと期待される。
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