本論文は、風評被害の補償についての法的論点と対応策の現状を論じ、その改善案を提案する。
風評被害の補償における法的論点は、①損害と事故・環境汚染などの相当因果関係が問題とされる場合、②報道機関など情報発信者の「公共の利害・公益に係わる」名誉毀損が問題とされる場合、③情報発信の意図と内容の根拠に関する「風説の流布」が問題とされる場合の三種類ある。
現状では、民事裁判などの裁定によって補償されることが多いが、被害者側にとって、a) 手続き上の煩雑さと解決の長期化、かつb) 損害額および原因との因果関係の立証が難しいという問題点があり、これを緩和するためのリーガルサポートが重要である。
具体的には、対策として①人間の心理や行動の専門家と法律の専門家による、生産者の被害の範囲、被害額の認定、②価格差損的手法による損害額の算定が、重要である。次に、その補償の原資を確保するため基金的制度として、③被害業種毎の共済制度、④加害業種毎の強制保険制度の確立が重要であると考え、これら制度をそれぞれの災害事象に応じて整備することを提案する。