2023 年 21 巻 1 号 p. 81-91
本研究の目的は、本邦の新型コロナウイルスパンデミック時に見られた価値観の実態を、調査票で得たデータの分析から試行的に明らかにすることである。この目的を達成するため、新型コロナウイルス感染症についての価値観を示す 22 項目について探索的因子分析を行った。分析の過程で新型コロナウイルス感染症に対するリスク重視傾向を示す項目が除外された。結果として、本邦では「自由重視」「弊害懸念」「共存重視」という価値観の構造が得られた。これらの構造がどのように行動と関連するのかを検討するため、感染防止行動と情報拡散行動を目的変数とする重回帰分析を行った結果、「自由重視」「弊害懸念」「共存重視」全ての因子得点が感染防止行動と有意な関連性を示し、「自由重視」および「共存重視」の因子得点のみが情報拡散行動と有意な関連性を示した。このうち、「自由重視」因子は感染防止行動に負の、情報拡散行動に正の方向性で関連を示しており、調査実施当時社会的に推奨される行動の忌避に影響していた可能性がある。また、これらの価値観と情報源利用頻度との関連性を相関分析により検証したところ、自由重視傾向が高い人々は主にインターネットを中心に情報収集をしていることが類推された。以上の結果は、パンデミック時の価値観が行動フローを規定する重要な要因であった可能性を示している。