2023 年 21 巻 2 号 p. 121-132
本研究は災害の記憶と継承をめぐるポリティクスについて、「想起の場」としての災害継承施設を対象として、戦争の記憶と継承に関する研究を手掛かりに整理を行ったものである。災害における「想起の場」は、「濃尾震災紀念堂」(濃尾地震)や「復興記念館」(関東大震災)などに始まり、防災・減災という目的を重視してきており、記憶の多声性や理解不可能性の認識と尊重というよりも、国家・行政による記憶メディアのコレクション化という傾向が見出される。もちろんコレクション化への対抗的な動きも行われてはいるが限定的なものに留まっており、戦争の記憶と継承をめぐってこのような記憶の回収に対する抵抗が長く行われてきたことを鑑みれば、災害におけるそれは記憶と継承のポリティクスに対する関心がいまだ十分ではなく、記憶の多様さを受け止め、またその継承の可能性を考える必要が認められることが明らかとなった。