平成16~17年に発生した大規模水害の実証的分析に基づき、市町村による避難勧告・指示の決定・伝達過程と住民による避難行動を検証した。その結果、大規模水害の発生・終息過程には共通のパターンがあることがわかった。このパターンを事前に学習することにより、早い段階で先を読む(見通しを立てる)ことが可能になり、先手をとった応急対応が可能になることを示唆した。また、水害時の早期避難を実現するための条件を6つに整理した上で、その条件の中でも特に住民による避難勧告・指示の受容がきわめて実現困難な課題であることを被災住民へのグループインタビューに基づき明らかにした。最後に避難勧告・指示を出す責務を負っている市町村が事前に危険地区住民に対する啓発を徹底すると同時に、避難しない/できない住民が必ず存在するという前提に立った水害時応急対応戦略の検討を提案している。