災害情報
Online ISSN : 2433-7382
Print ISSN : 1348-3609
[研究ノート]
災害情報のメタ・メッセージによる副作用に関する研究
佐藤 慎祐菊池 輝谷口 綾子林 真一郎西 真佐人小山内 信智伊藤 英之矢守 克也藤井 聡
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2011 年 9 巻 p. 172-179

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抄録

防災対策やその専門家に対して住民が依存し,その自主性を貶めている可能性が指摘されている.この可能性は,リスク・コミュニケーションにおいて意図せざる内に生ずると言われる「メタ・メッセージ」によるものと考えられる.ここにメタ・メッセージとは「表立つメッセージとともに暗黙裡に伝わるメッセージ」を指す.本研究では,リスク・コミュニケーションに伴うメタ・メッセージによって,住民が「自主性を失い,専門家やその情報に過度に依存してしまうようになる」という効果を「メタ・メッセージ効果」と定義し,それがリスク・コミュニケーションに内在する可能性を,鹿児島県さつま町を対象とした土砂災害に関するアンケート調査から得られたデータにより検証した.また,対象地域では事前に3種類の異なるコミュニケーションを実施しており,その違いを用いて,メタ・メッセージ効果による態度が,適切なコミュニケーションを通じて改善される可能性を検証した.その結果,こうしたメタ・メッセージ効果が存在する場合があることが実証的に示唆された.また,情報を主体的に活用することを要請するコミュニケーションを実施することによって,メタ・メッセージ効果が低減され,住民における自主性が改善される場合があることも示唆された.

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© 2011 日本災害情報学会
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