2011 年 9 巻 p. 172-179
防災対策やその専門家に対して住民が依存し,その自主性を貶めている可能性が指摘されている.この可能性は,リスク・コミュニケーションにおいて意図せざる内に生ずると言われる「メタ・メッセージ」によるものと考えられる.ここにメタ・メッセージとは「表立つメッセージとともに暗黙裡に伝わるメッセージ」を指す.本研究では,リスク・コミュニケーションに伴うメタ・メッセージによって,住民が「自主性を失い,専門家やその情報に過度に依存してしまうようになる」という効果を「メタ・メッセージ効果」と定義し,それがリスク・コミュニケーションに内在する可能性を,鹿児島県さつま町を対象とした土砂災害に関するアンケート調査から得られたデータにより検証した.また,対象地域では事前に3種類の異なるコミュニケーションを実施しており,その違いを用いて,メタ・メッセージ効果による態度が,適切なコミュニケーションを通じて改善される可能性を検証した.その結果,こうしたメタ・メッセージ効果が存在する場合があることが実証的に示唆された.また,情報を主体的に活用することを要請するコミュニケーションを実施することによって,メタ・メッセージ効果が低減され,住民における自主性が改善される場合があることも示唆された.