災害時に設置される災害対策本部には、単なる情報収集機関としてではなく、意思決定機関としての役割が期待される。災害対策本部に参集・常駐する警察、消防、自衛隊などの災害対処機関は、被災地現場において情報収集活動の中心的役割を果たす。その一方で、被災自治体の職員をみると、災害の規模に比例して、その参集率は漸減していく傾向にある。このため、災害対策本部が意思決定機関として機能するには、これら災害対処機関を基軸とする連携のあり方を考究する必要がある。
これら災害対処機関は、相互に活動領域が重なり合うため、災害時には組織間連携の必然性が生じる一方で、別個の指揮系統に属しているためその調整は容易ではない。さらに災害時の連携においては、人員や構成機関が流動的になるため、意思決定機関としての役割を果たすことは一層困難なものとなる。これを解決するには、各機関同士の相互依存性を強化することよりもむしろ低減させることが重要である。
本稿では、災害時の優先事項を事前にルール化した「準拠枠のルール化」の設定、さらに常駐機関の「群化」による「連携のモジュール化」を提唱している。これにより、災害時における各機関の相互依存関係を低減させ、意思決定の迅速化を図ることが可能となる。ただし、こうした連携のモジュール化が機能するためには、各機関がスムーズに情報共有を行なうことができるための共通土台の構築が必要条件となる。
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