抄録
本研究は、避難行動のシミュレーション実験から、乳幼児を連れて垂直避難する際の、保育学生にかかる運動強度と身体的負担の基礎資料を得ることを目的とした。健常な女子大学生9名を対象に、津波発生時に建物の1階から4階まで保育者一人当たり四人の子どもを連れて避難することを想定したシミュレーション実験を実施した。1歳児を想定した10kgのおもりを一つ両手で抱え4往復する1×4条件と二つ抱え2往復する2×2条件を設定した。異なる条件を用いて避難時間、心拍数、主観的運動強度(RPE)、身体的負担を比較した。その結果、1×4条件の最大心拍数は150±22拍/分、RPEは18.2±1.6であり、2×2条件の最大心拍数は123±24拍/分、RPEは16.6±1.9であった。これらの結果から、子どもを抱えての垂直避難中の保育学生の運動強度は、中〜高強度であることが明らかになった。身体負担感については、特に足と腕の疲れで高値を示し、子どもを抱えて垂直避難を行うためには、持久力及び筋力が必要であることが示唆された。また、両条件の運動強度の比較では、2×2条件がそれぞれ有意な低値を示した。一度の垂直避難で腕にかかる負担が多少大きくても、往復距離の短い2×2条件での避難が避難時間も短く、身体的負担も少ないことが明らかになった。