抄録
本論文は三国時代から高麗時代にかけて椅子などの座具にどのようなデザインが使用されていたかを検討し, その変遷を知ることを目的とした。 また,生活場面で座具がどのような意味をもたらしたかを検討したものである。初期にみられる座具は,王が坐っていた三国時代の座床(ざしよう )である。
5世紀には次第に座床(ざしよう )に動物の歯形文様がみられ,高麗時代には竜の文様の玉座がみられることにより,座床(ざしよう )と玉座,動物の歯形文様と竜の文様が「掴或の象徴」として使われていたと考えられる。さらに高麗時代にはすでに竜という空想の動物が人々の心に潜在していたことが垣間見られる。特徴的なものは,統一新羅時代に高官が腰掛けている背もたれの付いた椅子が存在し, これが現在における韓半島の椅子の原型ではないかと考えられることである。高麗時代には,青磁座敦(ざとん )が作られ,王や上流階級に使われており,この時期は青磁の発達と共に座具としての画期的な変化が生じた時代であろう。