抄録
本研究は,人間に理解しやすい3D CAD アニメーションを制作するための科学的な指針を提案することを目的とする。本論で行った実験では,オフィスビル内の特徴的な空間を実験対象として選定した。さらに各空間ごとに,水平画角,歩行速度,視線の向き,視点高,添景量などのパラメータの値を変えて数種類のアニメーションを制作し,55名の被験者による印象評定実験を行った。この結果,パラメーターの中で歩行速度が人間の印象に最も影響を与える要因であることが分かった。また,先行研究で得られた住宅空間とオフィスビルとの実験結果を比較したところ,住宅での適切な歩行速度が1.25m/s であったのに対し,オフィスビルでは,内部の空間によって適切な歩行速度の値が異なることがわかった。このことから,インテリア空間全体の規模だけでなく,インテリアの要素に応じて,歩行速度を適切に設定する必要があることが示された。