抄録
戦後日本における主要木製家具メーカー各社は,ライバル社と競合しつつも上手に棲み分けしながら自社独自のコンセプトに基づくホームユースのトータルインテリアコーディネート家具シリーズを開発・発表した。その結果,戦後日本の木製家具市場には,実に多種多彩なスタイルのトータルインテリアコーディネート家具シリーズが溢れることになった。その主な家具スタイルは,戦前一部の富裕層しか享受できなかった伝統的ヨーロッパスタイルの量産版,世界中で根強い人気を博している田舎風家具のカントリースタイル(ヴァナキュラスタイル)の国産版,建築・インテリアから日用品に至るまで,20世紀の世界中の国々を席巻して各国独自の展開を見せたモダンスタイルの国産版,そして日本独自の美意識に基づく和風スタイルであった。