抄録
近年の公立図書館は,図書の電子化やインターネットの普及により,これまでの図書資料の保存や開示といった図書館そのものの基本的な機能の再考が求められている。また同時に公立図書館は公共建築として,地域活性化の情報発信拠点として,また地域の防災・応災の拠点としてなど様々な側面から地域でのあり方の再編も求められている。この様な社会的状況を背景として本論では,これまでわが国の建築家が,公立図書館建築を設計する際に,どの様に地域との関わりを思考し,またそれを具体化してきたかを明らかにし,それをもとにこれからの公立図書館建築のあり方を示そうとするものである。筆者らは既報でこの地域との関わりをもつ主題の具体化(接点領域)について分析し報告をした。本論はこの既報の分類をもとに,現代日本の建築家の公立図書館建築の設計論における地域と関わりをもつ主題とその具体化の対応を検討している。