抄録
近年,少子化や共働き世帯の増加,働き方の多様化など社会的状況の変化によって,保育所や幼稚園といった保育や幼児教育に関わる施設をとりまく状況は著しく変化し,その施設の位置付けの見直しが進んでいる。また近年の建築専門誌を概観すると,特に2010年以降の保育所や幼稚園といった保育や幼児教育に関わる施設の掲載数が飛躍的に増え,それら施設のあり方の再考が多く議論されている。このような状況から本研究ではまず,わが国における保育や幼児教育に関わる施設のうち保育所に関する設計論を取り上げ,その主題と具体化から,現代日本の建築家の保育所に関わる設計思想の枠組みを通時的傾向と共に明らかにする。主題はKJ法を用いて意味内容の関係図を示し,具体化は領域的関係性によって分析する。また後に,幼稚園の設計論についても同様な研究を行い本論と比較検討することで,今後の保育や幼児教育に関わる施設の設計に関する指針を示すことを目指している。