ピアノ演奏の熟達度評価に関する研究が多数行われているが,演奏経験の有無が熟達度評価に与える影響については議論されていない。この研究では,多数のピアノ演奏を「経験者及び未経験者が熟達と評価」「経験者のみが熟達と評価」「未経験者のみが熟達と評価」「経験者及び未経験者が未熟と評価」の計4群に分類し,各群の演奏データの固有成分「Eigenperformance」を抽出し,演奏群間で比較している。その結果,経験者は未経験者よりも楽節の終止に向けて長い時間をかけて緩やかかつダイナミックにテンポを変化させている演奏を高く評価し,楽曲の構造を意識した演奏表現に対して高く評価するといった経験による評価基準の多様性が示されている。