朝鮮語教育 : 理論と実践
Online ISSN : 2434-1142
Print ISSN : 2188-6768
実践報告
学習者オートノミーのために
韓国語の例を中心に
Claire Frances印 省熙
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2019 年 14 巻 p. 73-92

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抄録

本稿は、アメリカと日本の大学における自律学習を支援する教育実践を紹介する ものである。米国のグリネル大学には正規の韓国語授業が無く、代替の単位取得可 能な授業としてALSO プログラムがある。本プログラムでは、トレーニングを受け た韓国人留学生がチューターになり、韓国語学習者への学習支援を行う。本プログ ラムの授業に登録した学習者は大学のオンライン上の学習内容を自己学習し、週3 回チューターと会い、学習内容を確認、修正、定着させていく。学部の学生である チューターと学習者自身の自己管理に依存する学習法であるため、教員は、毎学期 の初めに特別セッションを設け、チューターと学習者に、学習目標設定、学習スト ラテジー、自己評価の方法や学習のためのツールを含めた自律学習支援のオリエン テーションを行う。このような支援により、チューターも学習者も自律学習の重要 性と方法を身に付け、学習を遂行していく。このように培われた学習能力は、語学 だけでなく、すべての学習において適用でき、「学習者オートノミー」は定着してい く。 教室の外で、母語話者学生の支援のもと学習をする活動として、日本の早稲田大 学には「LA 室(ラーニング・アシスタントルーム、学修支援室)」がある。「LA 室」 は、単位とは関係なく、学習者が自由に訪れ、LA の支援のもと、語学学習と異文化 理解の場として利用できる空間である。自律学習支援の場であり、向上心の強い学 習者は教室での学習成果を確認・発展させるため頻繁に利用する反面、初級の学習 者や受動的な学習者の自主的な利用が少ない。LA 室は出来て間もなく、自律学習 を支援するための課題が多い。そんな中、ALSO プログラムにおける教育実践は、 自律学習支援のための示唆に富んでおり、LA 室活動はもちろんのこと、教育全般 における「学習者オートノミー」育成のために大変役立つものであると考えられる。

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© 2019 朝鮮語教育学会
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