抄録
聾教育は音声言語の習得を目指した以前の口話法から手話を併用した二言語教育の時代に変化してきた。当初、聾教育の現場では日本語に対応した日本語対応手話(手指日本語)が採用されていたが、その後、日本語とは文法構造を異にする日本手話の存在が再評価されたことにより、二つの手話のいずれが聾教育にとってより妥当なのかという議論が生じた。 しかし、いずれにしても聾教育における手話の意義は書記日本語教育との関連の中で検討されなければならないという事情がある。なぜなら、聞こえない子供たちは就学後、教科書という文字テキストを基盤とした教科学習という避けがたい現実の中に置かれるからである。手話も書記言語も共にその意義と妥当性はこの現実の中で問われざるを得ないのである。