手話学研究
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論文・査読
  • 超拡張記号図式と圏論による形訳・義訳・音訳機序の記号論的考察
    末森 明夫
    原稿種別: 論文・査読
    2022 年 31 巻 1 号 p. 1-21
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル フリー

    本稿は超拡張記号図式を用い、指漢字にみる形訳機序と表語音節語にみる義訳機序および音訳機序が音韻極、書記極、手話極、意味極の4極より3項関係を構築し、有意味極同士ないし非意味極同士を関係づける記号過程を図式化し、形訳、義訳、音訳の機序にみる個別性および共通性を可視化した。続いて圏論における関手圏を用い、形訳、義訳、音訳の機序が3項関係の関係づけを含む関手圏における自然変換により構築され得ることを図式化し、形訳、義訳、音訳の機序が自然変換を通した圏論的な同じさを示すことより、指漢字と表語音節語にみる機序を体系的に把握し得ることを可視化した。さらに形訳機序にみる有意味極と非意味極の変換を記号階層図ないし記号接地階層図に連関布置し、指漢字や表語音節語が範畴界を中心に類像界と象徴界の間にまたがる動物的通路(=範畴的表出)を往復する動態的様相を詳らかにした。 漢字や仮名の影響の下に造語された指漢字や表語音節語の造語機序は、漢字文化圏における手話言語造語機序の個別性であり、音素文字文化圏における手話言語からは窺いにくい。指漢字や表語音節語が示す文字性と図形性の重層性および動態性を音素文字文化圏の手話言語に投影することにより、漢字文化圏と音素文字文化圏にみる手話言語造語機序の普遍性を可視化し得るものと考えられる。このような象徴界における言語記号、範畴界における言語性と非言語性の区別が困難な記号、類像界における非言語記号を包摂する手話言語造語機序の理論化は手話言語学を包摂する手話記号論の拡充に資するものとも考えられる

研究ノート・査読
  • 「日本語→日本手話・対訳辞書」の記号図式と記号過程にみる換喩的描写と提喩的一般化
    末森 明夫
    原稿種別: 研究ノート・査読
    2022 年 31 巻 1 号 p. 22-34
    発行日: 2022/12/28
    公開日: 2023/12/28
    ジャーナル フリー

    本稿は本稿の目的は手話辞書学の展開にあたり、「日本語→日本手話・対訳辞書」にみる記号図式と記号過程の考証に言語学的接近法とともに、記号論的接近法を援用し、手話記号論を手話言語学領域にも受け入れ得るものにすることである。それは手話辞書学において手話言語学を排除するものではなく、手話言語学と手話記号論の対話を通した知識の構造化をはかるものである。本稿は画像の本質は外延指示であるとみなすGoodman 指示理論、画像の述定図式と註文の指示図式の組み合わせが描写対象を指示するとみなすBennet 画像理論、画像の本質は不確定対象の非外延指示であり、解釈者による提喩的一般化を経て描写対象の指示がおこなわれるとみなすBeardsley 画像理論を援用し、手話対訳辞書にみる見出し語、挿絵(=画像)、および挿絵説明文(=註文)の記号図式と記号過程を考証した。その結果(1)紙媒体の「日本語→日本手話・対訳辞書」の画像と註文の組み合わせが辞書利用者の学習度をはじめとするさまざまな文脈との作用を通して日本手話語彙(固定語彙・類辞語彙)を指示し得ること、(2)画像と註文の組み合わせによる日本手話の指示は不確定表示の提喩的一般化という記号図式と記号過程に描くことが可能であること、の二点が示唆された。このような知見は電子媒体の「日本語→日本手話・対訳辞書」にみる手話動画をより利用しやすい様態に改善していくための参考になり得る

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