手話学研究
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日本手話にみる指漢字と表語音節語
超拡張記号図式と圏論による形訳・義訳・音訳機序の記号論的考察
末森 明夫
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2022 年 31 巻 1 号 p. 1-21

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抄録

本稿は超拡張記号図式を用い、指漢字にみる形訳機序と表語音節語にみる義訳機序および音訳機序が音韻極、書記極、手話極、意味極の4極より3項関係を構築し、有意味極同士ないし非意味極同士を関係づける記号過程を図式化し、形訳、義訳、音訳の機序にみる個別性および共通性を可視化した。続いて圏論における関手圏を用い、形訳、義訳、音訳の機序が3項関係の関係づけを含む関手圏における自然変換により構築され得ることを図式化し、形訳、義訳、音訳の機序が自然変換を通した圏論的な同じさを示すことより、指漢字と表語音節語にみる機序を体系的に把握し得ることを可視化した。さらに形訳機序にみる有意味極と非意味極の変換を記号階層図ないし記号接地階層図に連関布置し、指漢字や表語音節語が範畴界を中心に類像界と象徴界の間にまたがる動物的通路(=範畴的表出)を往復する動態的様相を詳らかにした。 漢字や仮名の影響の下に造語された指漢字や表語音節語の造語機序は、漢字文化圏における手話言語造語機序の個別性であり、音素文字文化圏における手話言語からは窺いにくい。指漢字や表語音節語が示す文字性と図形性の重層性および動態性を音素文字文化圏の手話言語に投影することにより、漢字文化圏と音素文字文化圏にみる手話言語造語機序の普遍性を可視化し得るものと考えられる。このような象徴界における言語記号、範畴界における言語性と非言語性の区別が困難な記号、類像界における非言語記号を包摂する手話言語造語機序の理論化は手話言語学を包摂する手話記号論の拡充に資するものとも考えられる

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