目的:歯科インプラントが長期間安定して機能するためには,上部構造のパッシブフィットが重要な条件の一つである.スクリュー固定式上部構造はセメント残留リスクがなく,長期間メインテナンスを行う上でのトラブルに対応しやすい優れた方法ではあるが,製作手順が複雑であるためにパッシブフィットを得ることは術者や歯科技工士の技量に影響されやすい.今回,パッシブフィットが得やすく,審美的で破折を起こしにくいスクリュー固定式上部構造の製作方法を考案したので提案する.
方法:既製のスクリュー固定用アバットメント上にスクリュー固定で支台歯形態の中間構造を製作し,さらにその上にアクセスホールを付与したブリッジ形態のフルジルコニア上部構造を製作する.それらを口腔内でセメント合着,さらに一旦外して余剰セメントを除去,研磨した上で装着する.
結果:現在15例に応用し最長3年を経過したがすべて良好である.
結論:スクリュー固定式上部構造製作にあたり,今回のフルジルコニアを用いたScrew Retain with Cementation法を用いることにより患者術者双方の負担を軽減し,審美性を確保した上でパッシブフィットを比較的容易に得ることができる.加えてインプラント周囲溝内へのセメント残留を生じない方法であると考えられる.