2012 年 15 巻 2 号 p. 225-232
【問題と目的】大学生にとって卒業後の進路決定は,職業的社会化の重要な契機であり,生涯において重要な意味を持っている。進路選択・決定を行う際に重要な役割を果たすのが,進路選択に対する自己効力感(Career Decision-Making Self-Efficacy:以下,CDMSE)である。しかし,我が国の大学生はCDMSEの低さが問題視されている。これまでのCDMSEの研究では,CDMSEを高めることによって,職業未決定の抑制や職業指導における問題解決につながることが指摘されているが,CDMSEを高める為の方法に関する研究は非常に乏しい。
本研究では,CDMSEを高める方法の手がかりとして社会的スキル(Social Skills:以下,SS)に注目し,SSとCDMSEの関連を検討することを目的とする。
【方法】SSとCDMSEの関連を検討するために,18歳から29歳の私立A大学の学生を対象に,無記名による集合調査法で質問紙調査を行った。
【結果】第1にSSとCDMSEについて学年比較したところ,4年生は1年生と2年生よりもSSが高く,4年生と3年生は1年生よりもCDMSEが高いことが明らかになった。第2に,男子学生のCDMSEは,女子学生よりも高い傾向がみられた。第3に,相関分析の結果より,SSとCDMSEは関連があるという結果が得られ,加えて重回帰分析を行った結果,SSの3因子はいずれもCDMSEに正の影響を与えていることが示された。
【考察】本研究の結果から,SSの獲得がCDMSEの向上につながる可能性が示された。特に,「トラブル対処スキル」を向上させる効果のあるキャリア教育を行うことは,CDMSEを向上させることと関連があると考える。