学校メンタルヘルス
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資料論文
発達障害傾向をもつ高校生の自己認知の特性―教師の理解との相違点を探る―
肥田 幸子
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2015 年 18 巻 1 号 p. 22-29

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抄録

【問題と目的】通常の学級において,発達障害の生徒および診断は出ていないが発達障害傾向をもつ生徒への具体的な支援は重要な課題である。教師の取り組みを報告している研究は多い1)が,文部科学省はこれらの児童・生徒の指導方法については,教員が十分に理解できていない可能性があることも指摘している2)。本研究は,診断の有無によらず,発達障害特性を有する生徒の自己認知と教師の理解の相違点を明らかにすることを目的とした。

本研究は研究1「発達障害傾向の生徒は,自身認知の特性に関して,なぜ自覚しやすい問題と自覚しにくい問題があるのか」と研究2「教師の気づきにくいAutism Spectrum Disorder(自閉症スペクトラム障害3),以下ASD)傾向の生徒の内面的な問題」から成り立っている。これらはともに教師が理解しにくい可能性があり,発達障害傾向の生徒の理解を深める上で重要である。

【方法】対象は通常の学級に在籍する高校生とその担任とした。研究1では,高校生250人,教員7人,研究2では高校生651人,教員16人を対象として質問紙調査を実施した。それぞれの結果から平均値の差の検定を行った。

【結果】研究1では,発達障害傾向あり群となし群の間で,本人が困る項目と他者は困るが本人は困らない項目で差があることが明らかになった。研究2では,学校不適応のa項目群の中で,生徒回答におけるASD傾向あり群となし群に差があったのは不適応徴候,コミュニケーションスキル,承認欲求,友人関係であり,教師回答では,不適応徴候,コミュニケーションスキルであった。

【考察】研究1では,教師が指摘する発達障害傾向の生徒たちは,自分が困る問題は理解しやすいが,他者には迷惑な行為でも自分が困らない問題は認知しにくいことが明らかになった。研究2では,教師は承認欲求や友人関係の敏感さといった内面的な問題を抱えているASD傾向の生徒を抽出できていない可能性が明らかになった。

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© 2015 日本学校メンタルヘルス学会
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