【問題と目的】近年,部活動顧問教師の心身の負担に留意した活動のあり方に関する議論が続いている。顧問教師の心身の負担について,部活動指導に対する負担感とバーンアウトとの関連や,顧問をしている部活動種目経験の有無などが関連していることが明らかにされてきた。一方で,縦断調査を用いて,文化部顧問教師と部活動指導に対するやりがい感を考慮した上での検討が必要であると指摘できる。そこで,本研究では,部活動指導に対するやりがい感,負担感,約半年後のバーンアウトとの関連について,部活動の種類,種目経験の有無を考慮し検討することを目的とした。
【方法】中学校部活動顧問教師137名(運動部顧問教師: 男性38名,女性26名,文化部顧問教師: 男性29名,女性44名)を対象に,部活動指導に対するやりがい感と負担感,バーンアウトを測定する尺度を用いて検討した。なお,バーンアウトについては約半年後に調査を行った。
【結果】まず,2要因分散分析において,部活動指導に対する負担感は運動部が文化部よりも得点が高く,部活動指導に対するやりがい感は専門的指導群が最も得点が高く,負担感とバーンアウトは経験なし群が専門的経験群,個人的経験群よりも得点が高いことも示された。次に,多母集団同時分析の結果,種目経験の有無によって各変数間の関連には差異があることが明らかになった。
【考察】本研究の結果,運動部,文化部ともに,部活動顧問を担当することで心身の負担が増加するわけではなく,種目経験の有無によってその様相には差異があることが示された。一方で,種目経験のない部活動の顧問を担当する場合,バーンアウトのリスクが高いことに留意する必要がある。以上のことから,部活動指導に対するやりがいを感じる機会を増やし,負担を感じる機会を少なくすることが,部活動顧問教師の心身の負担の軽減に寄与するため,このような部活動運営のあり方について議論された。