【背景】日本の児童生徒の自殺対策は喫緊の課題で,その対策の一つに教職員対象ゲートキーパ―(以下,GK)研修があるが,その方法,内容,効果評価に関する報告は少ない。そこで,日本の教職員向けGK研修の方法,内容,効果評価に関する国内文献を整理し,これを海外文献と比較して,日本の現状を明らかにした。
【方法】国内文献は医学中央雑誌とCiNiiで,「自殺&ゲートキーパー」「自殺&学校&危機介入」「自殺&研修&教員」をキーワードに12件を抽出した。海外文献はPubMedで「suicide & gatekeeper &(school OR teacher)」をキーワードに11件を抽出した。
【結果】国内では,一部教職員対象に児童精神科医・大学教員・研究者等が自作のプログラムで実施したGK研修が多く,対照群の設定や中長期評価はほとんどなく,主に自由記述で評価していた。海外では学校ごとに学校スタッフ全員を対象に訓練を受けたトレーナーがQPR等の標準化プログラムで先行研究の尺度や質問で,対照群を設定し中長期評価やRCT評価もあった。知識・スキル・自己効力感は長期的に維持され,態度・行動への効果検証が課題とされていた。
【考察】日本の教職員向けGK研修では,学校ごとの全教職員向けGK校内研修の普及を目指し,その現状把握と,職種・経験別の役割の明確化をした上で,実践演習を含む研修プログラムの開発や知識・スキル・自己効力感・態度・行動変容・遭遇機会数等への中長期的評価を,適切な方法で行うことが今後の課題である。